いまのところ打率10割!吉村昭さんの本がまたしても面白かった

いまのところ打率10割!吉村昭さんの本がまたしても面白かった

吉村昭さんの本をまた読んだら、またしても面白かったので紹介します。ちなみに前回紹介した「漂流」はラジオ番組「たまむすび」で話題になったおかげで再び売れているそうですよ。

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前回のレビューはこちら
書評下手だけど面白すぎたので紹介したい2冊

熱死!爆死!雪崩死!地獄の難工事

高熱隧道

黒部第三発電所の水路トンネル(隧道)貫通までの難工事を描いた作品です。掘れば掘るほど温度が上がり、最高165度というとてつもない高熱地帯。資材運搬で次々と転落するわ、ダイナマイトは暴発するわ、雪崩で宿舎が吹っ飛ぶわで完工までに犠牲者は300余名。ほぼノンフィクションです。

岩に触れたり、蒸気を食らえば大火傷。温度を下げるために撒く水は熱湯となり、のぼせて気を失えば死の危険さえある。度を越した凄まじさはギャグ漫画を超えています

国家プロジェクトだった

ここまで犠牲者を出しても工事が続けられたのは、太平洋戦争が控えていた国が資源、エネルギーを蓄えるためになんとしても実現したいプロジェクトだったようです。

リアルピクミン

人夫(にんぷ。労働者のこと)と技師である主人公たちの関係は、まるでピクミンとキャプテン・オリマーです。人夫たちの心理を掌握し、彼らを効率よく動かすための作為的な振る舞いは、人を人と思わないような側面があり、現場の過酷さとは違った怖さを感じました。

管理職は経験がないのですが、ときとしてこんなにドライな感覚になるのでしょうか。人って怖いですね。

4回も脱獄した男の話

破獄

史上未曾有の4回脱獄を成し遂げた男、佐久間清太郎と、それに翻弄される看守たち、戦時中における刑務所の実情を描いた実話ベースの小説。1985年と2017年にドラマ化されています。

脱獄王の不気味なまなざし

本作の魅力はなんといっても脱獄王・佐久間の圧倒的な不気味さです。小柄ながら人間離れした力を持ち、手口も用意周到で大胆。思考もまるでわかりません。4回の脱獄とあらかじめ知らされていると、いつか、いつかと読んでいる方もドキドキ、ソワソワします。

その佐久間が意外な策によって脱獄から足を洗うのですが、それは読んでからのお楽しみです。

戦時中の刑務所、そして囚人

戦争の物語はいくつもありますが、戦時中の刑務所や囚人たちにフォーカスしたものは読んだことがなかったので驚きが多かったです。

人手不足になると囚人も戦地や造船に駆り出されたり、東京大空襲の死者の埋葬を手伝ったりしたそうです。囚人の掘った墓に入る人生なんて、なかなか想像し得ませんよね。

また、囚人の暴動を抑えるためには彼らの食事の質や量を落としてはならないため、戦時中の食糧難においても、とくに自給自足の設備をもった網走刑務所では囚人たちの食事は一般人や看守よりも良いものだったそうです。戦争はいろんなことを歪めてしまうんですね。

なぜ吉村昭の作品は映像化されるのか

彼の作品が次々とドラマや映画になる理由は読めばわかります。内容が強烈だから映像映えするという点と、ドキュメンタリーのような淡々とした語り口によって、むしろ想像を膨らませやすく、ゆえに作家や演者が思い思いに味付けしたくなるからだと思います。

高熱隧道のような作品もCGがある今なら実現できるでしょうし、したいと思っている作家は多いのではないでしょうか。ぼくも漂流や破獄はゲームにしたら面白そうだと感じています。

吉村昭さんの名作の紹介はこちら
書評下手だけど面白すぎたので紹介したい2冊